均等待遇
| 使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。 |
憲法14条1項は、「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」と定めていますが、この条は、この憲法の趣旨に従い、わが国で古くからみられた国籍、信条、社会的身分を理由とする労働条件についての差別的取扱いを禁止したものです。
ポイント
国籍
「国籍」は、人がある国の国民である関係を表わす用語として用いられています。国籍は各国の法律で定められており、わが国では国籍法に定められています。国籍による差別が問題となるのは、主として日本人労働者と日本国籍を持たない外国人労働者との取扱いに関してですが、二重国籍者や無国籍者についても、国籍を理由として差別する場合は、この条に違反することになります。
信条
「信条」とは、宗教上の信仰や思想上の主義のことをいい、政治的な信条も含まれます(昭22・9・13発基17)。したがって、労働者が、特定の宗教団体の会員であるとか、特定の政党の党員であるからという理由で差別的取扱いをすることは許されません。もちろん、会員であるとか党員であるといった場合に限定されるものではなく、特定の宗教を信奉しているとか、特定の政党の政治的方針を支持しているにすぎない場合であっても、そのことを理由として差別的取扱いをすれば、この条に違反することになります。
ただし、特定の思想信条にもとづく労働者の言動が、職場の規律を乱したり、業務に支障をもたらすようなときに、これを禁止したり懲戒処分を適用することは、こうした処分が職場の秩序を乱したこと自体を理由として行われるかぎり、特定の思想信条を理由とした差別的取扱いには該当しません。
なお、事業目的と一定の思想が密接に結びついている事業、例えば、政治団体、宗教団体等において、他の政治団体支持者、他の宗教信奉者が使用されており、その者の事業内における言動が事業の運営を著しく阻害する場合に、使用者が、事業活動の円滑な推進、事業目的の達成の観点から、当該労働者を排除する等の対応をすることは許容されるものと考えられます(三元貿易事件 東京地判昭45・1・30労判96・
50)。
社会的身分
「社会的身分」とは、生まれつきの身分や地位という意味で、いわゆる人種もこれに該当します。正社員(通常の労働者)、短時間労働者(パートタイム労働者)、有期雇用労働者、派遣労働者等の雇用形態の違いは社会的身分とは異なります。したがって、例えば正社員は月給制とし、短時間労働者または有期雇用
労働者には時間給で賃金を支給することは直接この条の問題とはなりません。
しかし、短時間労働者、有期雇用労働者といっても、正社員などの通常の労働者と比較し、均衡のとれた待遇が確保されるべきであり、通常の労働者と就業の実態が同じような短時間労働者、有期雇用労働者であれば、通常の労働者と均等な待遇が確保されるべきです。こうした観点から、「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(以下「短時間・有期雇用労働法」といいます。)は、「不合理な待遇の禁止」(8条)、「通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者に対する差別的取扱いの禁止」(9条)、通常の労働者との均衡を考慮した「賃金」の決定(10条)、職務内容同一短時間・有期雇用労働者に対する「教育訓練」の実施(11条)、「福利厚生施設」の利用の機会の付与(12条)、「通常の労働者への転換」(13条)、「事業主が講ずる措置の内容等の説明」(14条)等の規定を設けています。