「労働条件の原則」とは
| 第1条 労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要 を充たすべきものでなければならない。 ② この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない。 |
憲法25条1項は、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」と定めています。労働者も国民である以上当然に健康で文化的な最低限度の生活を営むことを憲法によって保障されています。法1条も、この憲法の理念にもとづいたものであり、法が定める労働条件の基準が最低のものであること、労使の当事者は、法が定める労働条件の基準を理由に労働条件を引き下げてはならず、むしろ労働条件を向上させるよう努力すべきであることを定めています。
ポイント
労働条件
「労働条件」とは、賃金、労働時間、解雇、災害補償、安全衛生など、労働者の職場におけるすべての待遇をいいます。
労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきもの
「人たるに値する生活」とは、憲法25条の「健康で文化的」な生活を内容としますが、具体的には社会通念によって決まるものです。労働者が人たるに値する生活を営むためには、その標準家族の生活も含めて考えることとされています(昭22・9・13発基17)が、標準家族の範囲も一般の社会通念によって理解されるべきものです(昭22・11・27基発401)。
労働条件の基準
労働条件の基準とは、個々の労働者の労働条件について、その全体に通じる一般的な標準をいいます。
労働関係の当事者
「労働関係」とは、労働者が労務を提供し、これに対して使用者が賃金を支払うという関係を基本とするもので、その当事者には、使用者と労働者のほかに、使用者の団体と労働組合も含まれます。
この基準を理由として労働条件を低下させてはならない
「この基準を理由として労働条件を低下させる」とは、たとえば、1日7時間の労働時間を定めていた場合に、法が8時間労働を定めているからという理由で、労働時間を8時間に変更するような場合をいいます。
この条が禁止しているのは、法の定めを理由として労働条件を低下させることであり、社会経済情勢が変化したことなどが決定的理由となって労働条件が低下した場合は、この条とは関係ありません(昭22・9・13発基17、昭63・3・14基発150)。
また、昭和61年4月から女子の労働時間、休日、深夜業、坑内労働、危険有害業務など女子の保護に関する基準が改正されていますが、この改正の趣旨に沿って、労使が自主的に労働条件を改定することは、この条との関係で特に問題はないとされています(昭61・3・20基発151・婦発69)。
本条違反
この条に定める義務の違反については罰則はありません。問題となるのは、法の定めを理由として労働条件を低下させた場合、その効力がどうなるかという点です。
この条は全体として、労働条件はこのようなものでなければならないという基本的な考え、つまり訓示的な内容を定めたもので、この条によって低下させた労働条件そのものが無効となるわけではありません。ただし、法の定める労働条件の基準は最低の基準ですので、労働条件を低下させた結果法の定める労働条件を下回る場合は、最低基準を定める労働基準法のそれぞれの条文によってその効力が否定される
ことになります